十一月ふたりのボートが、宝ヶ池をなぞってゆく日/AB(なかほど)
僕の音だよ
それから
風が吹いて
葉が散って
影が伸びて
真っ赤な顔の幼い君は帰る
暖かいお風呂の炊かれた家へ帰る
あんただって
進めないじゃない
君は不思議そうな顔で
くしゃくしゃになった僕を見てる
くしゃくしゃになりながら君を見ている僕を見ている
なんてことだ
恋人としての君をなくすよりも
確かに愛した君をなくすよりも
泣きたいことがあるなんて
君は気付いていたのだろうか
あの紅い顔の夕陽から
この池の景色で
変わってないものなどなにひとつないけれど
なにひとつ変わらなかった思いが
今
静かに
散っている
fromAB
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