ネギ侍/
佐野権太
あ・・・
相変わらず女房殿の斬撃には
容赦がない
眼前に敵。
体を入れ替え、すれ違う
佩刀に目を光らせる子の背を押すように
いそいそと母親がいく
ふむ、子連れであったか
命拾いをしたな
柄から静かに手を離す
表に出ると
すっかり春の陽気だ
猫砂の袋を担ぎなおし
手ぬぐいを取り出して
月代をぬぐう
かすかな洗剤の香り
のあとに
さわやかな葱の微風
何ごとであろう
彼方から
よろず屋の主人が
あたふたと追いかけてくる
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