たもつさん「サイレン」を読んで(感想文)/ベンジャミン
しまった僕は、まるで暗示にかかったように自分の記憶の入り口を開いてしまいました。そして続けざまに、「ちょっとした仕草」や「身体の匂いとか」が表現されていて、漠然とではありますがその情景を思い描いてしまったのです。しかも(これは全ての連について言えることなのですが)その描写は一枚の絵を仕上げるほどには語られていないのです。読み手である僕が推測するまでもなく、自然と僕自身が持っている記憶の断片とつながってしまうんですね。そうやって、2連目3連目に続いてゆくわけですが、ここらへんはとてもほのぼのとした語り口で綴られていて、たとえば「小さな食事」とか「今年は甘いなあ」なんていうセリフとか、ともすれば中だる
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