火の重さ (共作)/クリ
 
ぐにみつめるのをやめる ほかのものを
見なければならないしそれは彼が決めることではない 次から次へと
むこうからやってくる 彼の目は虫ピンで留められた環形動物だ
その食道をさまざまなものたちが好き勝手に行進する


行き先はどこなのか 正確な地名と番地を彼はそらで言える
そしてもう二度と帰ってこないだろう どんな乗り物に乗るにせよ
彼は最前列で前にはみ出す 彼の喉はますますだれかの遺骨で
塞がれ 肺の中の空気はよそよそしく明けたり暮れたりする
彼の出発はほかのあらゆる出来事と同じくなんの妨害も受けない


それでも 誰かが彼の足下に火を落としたら と彼はまた喉に
違和感を覚えながら願わずにはいられない
誰かがどんなに小さな火でもいいから
足下に落としてくれたら 彼のからだはたちまち
引火し燃えあがるだろう なにに乾いているわけでもないという種類の
乾き
火の重さ

笠間駿介と共作

                      Kuri, Shunsuke Kasama : 2004.07.07
   グループ"コラボレーション"
   Point(1)