ぼくがいる証拠/アンテ
ふわりと風に持ち上げられて
風船はまた
地面に這いつくばる
いつの間にか
ずいぶん膨らんだ気がする
大きく息を吸って
ゴムの口に吹き込む
酸素と二酸化炭素の比率
だけが
中と外の違いだろうか
薄いゴム一枚を隔てて
ふたつの気体は
互いを押し潰そうとする
指で強く押さえていなければ
今にも飛んでいきそうだ
ずいぶん大きく膨らみましたね
通りがかりの人が立ち止まる
ぼくが息を吹き込むのを
しばらく不思議そうに眺めてから去っていく
今やめてしまえば
口を縛れば
風船はだれかの手に渡るだろう
次の日 萎んでしまったのを見つけて
もっともらしい説
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