創書日和「炎」 彼女/逢坂桜
女に手を伸ばす
4人がかりで押さえつけられた私は、自分の苦痛より、
見たこともない怯えた表情の彼女に、顔をゆがめた
そこへ、男が登場
首謀者はひきつった顔だったが、それでも精一杯の虚勢をはった
彼が彼女の名前を呼んだ時、風よりも早く彼女は彼の元へ走った
彼の右腕に、しっかりと腕を絡めて、女を見た
「もう、あんたなんかこわくない」
一瞬にして彼女の眼に宿った強い光は、炎のようだった
すべてを燃やしつくすような、強い、まなざし
そして、口元には笑みを浮かべていた
子供のような笑顔は微塵もなく、
兵士を率いる女神のように、気高く、凛々しく
そんな彼女を見たのは、後にも先にもその時だけだった
誰しも、己の内に火を灯していて、
時には炎、時には焔となることを、知った
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