創書日和「炎」   彼女/逢坂桜
 
女に手を伸ばす

   4人がかりで押さえつけられた私は、自分の苦痛より、

   見たこともない怯えた表情の彼女に、顔をゆがめた

   そこへ、男が登場

   首謀者はひきつった顔だったが、それでも精一杯の虚勢をはった

   彼が彼女の名前を呼んだ時、風よりも早く彼女は彼の元へ走った

   彼の右腕に、しっかりと腕を絡めて、女を見た

   「もう、あんたなんかこわくない」

   一瞬にして彼女の眼に宿った強い光は、炎のようだった
  
   すべてを燃やしつくすような、強い、まなざし
   
   そして、口元には笑みを浮かべていた
    
   子供のような笑顔は微塵もなく、

   兵士を率いる女神のように、気高く、凛々しく



   そんな彼女を見たのは、後にも先にもその時だけだった

   誰しも、己の内に火を灯していて、

   時には炎、時には焔となることを、知った
 
   グループ"創書日和、過去。"
   Point(10)