創書日和「火」/虹村 凌
 
火をみた事が無い彼女の為に
僕は火をつけて回ったのだ
燐寸箱
煙草の箱
捨てられた新聞紙

彼女は大きい火を見ると喜ぶので
どんどん火は大きくなった
ベンチ
ゴミ箱
公衆便所

倉庫
どんどん燃やしては
彼女を喜ばせた
満面の顔で笑う彼女を見るのが嬉しくて
僕はどんどん火をつけた

動かないものに火をつける事に飽きて
今度は動物に火をつけた

野良猫
ホームレス

火をつけられて尚動く彼らに
彼女は盛大な拍手を送った
僕もつられて盛大な拍手を送った
火をつける事がこんなに楽しいなんて
僕は今まで知らなかった
だって
学校じゃ禁止されて
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