創書日和「窓」     いまごろきみは/逢坂桜
 

資料室から廊下に出ると、すでに消灯の後だった

真っ暗な窓に、疲れた男の顔が映っている

自分でも気づかぬうちに、笑おうとしていた

   いまごろきみは

要領が悪く、人の分まで残業が続く現在のおれと、

イジメ逃れの為、他人の宿題漬けの過去のおれと、

なにが変わったというんだろう

   いまごろきみは

深夜の、妙にひんやりとしてコンビニで、

彼女はおれに、視線だけで行き先を促した

学校への近道の廃工場で、鉄パイプを拾った

   いまごろきみは

夜の学校は、昼間以上におれを圧迫していた

暗い窓ガラスが、まっすぐに続いていた
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