創書日和「窓」     いまごろきみは/逢坂桜
 


薄闇の中、彼女の白い腕が、弧を描く

真っ黒なガラスに、鉄パイプは綺麗に吸い込まれた

彼女は笑っていた

笑いながら、凄まじく、怒っていた

真っ暗なガラスに映る、彼女の笑顔は砕け散り

無理やり押さえつけた無表情のおれは、残った

「こわしてやる」
「こわしてくれ。全部」

怒りだけで全身を包み、笑顔で鉄パイプを振るった

砕ける硬い音と飛び散る破片のなか、彼女は笑っていた

   いまごろきみは

両腕に抱えた分厚いファイルを、投げ出したくなった

過去、いい加減に挟まれた書類は、滅茶苦茶になる

まだ続く残業も、いい加減な人間の尻
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