創書日和。窓 【青方偏移】/佐々宝砂
 
の話
俺だってそのころ生まれてたわけじゃないんだ
親父にきかされただけだよ
親父だって親父の親父にきかされただけだ
とにかく昔むかしの大昔
宇宙はどんどん広がっていた
このちっこい窓から見える星は
みんな揃って赤方偏移してた
赤方偏移っていうのはそんなに綺麗なもんじゃないらしい
赤色巨星あたりは可視光じゃなくなって
見えなくなっちまうらしい
だけどあるとき突然
何の前触れもなく
すべての星が青方偏移をはじめた
そんな馬鹿なことはあり得ないってんで
首くくった科学者もいたそうだよ
そもそもここはステーションであって
特に動力があるわけじゃないから
宇宙が膨張を続け
[次のページ]
   グループ"創書日和、過去。"
   Point(4)