創書日和「神」/虹村 凌
 
を一本抜き取ると
香水の匂いのするジッポで火をつけた

ふわり と広がる

その女は一通り話をし終えると
もうお前に話す事なんて無いと言って
屈託無く笑った
少し鳩胸のその変な女は
母親の誕生日に鼻を買って帰るんだと
鼻屋を幾つか見て帰ったけれど
結局は欲しい鼻が見つからずに
小さなその鳩胸を少しだけ膨らませて
不満そうな顔をして帰っていった

その女は少し鳩胸の変な女だった

その女は新しい彼氏が出来た時も
その彼氏と関係が危うくなった時も
ゴキブリ以上に変な虫が出た時も
いつも俺に電話をしてくる変な女だった

その女はついこの前
俺の目の前で鳩になると言って
この窓を破って出て行ったきり
帰ってきていない
この鼻をあげたら帰ってきてくれるかと
神様じゃない悪い奴に
契約を持ちかけようと思ったけれど
俺もその窓から出て行こうか迷ったまま
じっとしている
   グループ"創書日和、過去。"
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