記憶の断片小説続編・ロードムービー「卒業」/虹村 凌
 
で貰えないかな」
嘉人は笑ってOKしてくれた。この時、俺は心から笑っていたのだろうか。
嘉人、俺の笑顔に曇りはあったのだろうか?

 彼女は、俺のノートに立派な感想文を書いてよこしてくれた。
それから幾度か、嘉人を通して、俺と彼女の間をノートが行き来する日が始まった。
舞子の言っていた事を本当だと信じるかはともかく、
舞子は俺に興味があったようだ。皮膚炎で泣き叫ぶ俺に、である。
俺の散文詩に対して執拗に調べ回り、俺が忘れかけていた事さえ、
彼女は調べ上げ、感想に書いて寄越したのだ。
 仲介者である嘉人は、文には疎い面がある事を舞子は知っていた。
彼女は、嘉人にはわからないよう
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