記憶の断片小説続編・ロードムービー「卒業」/虹村 凌
 

「崩れ落ちていく君は、とても綺麗だよ。」
…気持ち悪い。背筋が凍る。歯が浮く。
だが、まともな女性経験の無い俺は、これが精一杯なんである。
一年前に女の子に告白を失敗して以来、やや女性恐怖症気味だ。
何にせよ、彼女は微笑み、こういった。
「今、あなたに髪をさわられただけで、イっちゃいそうなの。」
撫でる、と言う行為にすら及ばない、触れただけで、と言う。
俺が?この、俺が?このツラの、俺が。
その時の俺は、満面の笑みで彼女を見つめていただろう。
 途中、嘉人からメールが来た。
「楽しんでいるかい?」
そんなメールだったと思う。新しい携帯、買えたのかどうかは覚えていない。
[次のページ]
   グループ"記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」"
   Point(3)