記憶の断片小説続編・ロードムービー「卒業」/虹村 凌
 
ルをしていた時期もあった。
朝一番の舞子の声は、寝ぼけた、少し絡みつくような甘ったるい声だった。

俺は、懸命に、下手な台詞を並べては、舞子を口説こうと必至だった。
同時に、侑子とも頻繁にメールをやりとりする。
時々、電話もするようになった。
続かない会話、何の為にしているのか、俺はわかっている筈なのに、
それを隠し通して、侑子とのメールや電話を繰り返した。
俺にとって、侑子は舞子を嫉妬させる為の駒でしかなかった。
全ては舞子の為に、俺の力は注がれていた。
金も、時間も、思考も、詩も、黒鉛も、消しゴムも、ノートも、全てが。


「外は春の雨が降って、僕は部屋で一人ぼっち。
[次のページ]
   グループ"記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」"
   Point(0)