荒川洋治を読んでみる(五) 『ウイグル自治区』/角田寿星
 


荒川が能天気に『ウイグル自治区』と書いてても、彼に罪はないよなあ…この詩集が刊行されたのが1975年、日本と中国の国交が回復した(ほんとに回復してんのかどーかはさておき)のが1972年。現代のぼくだって、ろくに何も知らないもんなあ…。

詩の味わいとしては『内蒙古自治区』にも似たところがありますが、より静謐さを感じさせる。それは、シルクロードに点在する地名、旅人の人生の足どり、この地のとおい歴史、それらがけして突出せずに並列したかたちで配されているせいでしょう。土地、人、時間が一体化してるんだね。

用語解説。

「高地のアンソロジィがつづく。」…巧い表現だなあ。比喩としてだけじゃなく、この一文で連作としてもすっと筋が通る。アンソロジィは詩とか文芸作品の選集という意味だね。

「地誌」…地理の書とか、地理を研究した書とか。

「懶惰」…「らんだ」と読みます。らいだ、じゃなかった…。なまけること。

「隠れウイグル族を走らす飴のような報せは、いつ。」…あ。これはもしかして…東トルキスタンの独立運動をそこはかとなく示唆しているのかも。
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