幸せと出会う丘で/恋月 ぴの
「おばあちゃん元気にしていた?」
わたしの大好きなおばあちゃん
共稼ぎの両親はいつも家にいなくて
学校から走って家に帰ると
おばあちゃんが出迎えてくれて
手作りのおやつがとても美味しかった
突然の雨降りに下駄箱の前で困っていると
にこにこしながら傘を持って迎えに来てくれて
どこかの民謡なんかを口ずさんでくれた
そんなおばあちゃんは待っていた
おじいちゃんが帰ってくるのを
おかあさんがまだおばあちゃんのお腹の中にいた頃
赤い紙切れに呼び出され沖縄に行ってしまった
「必ず帰ってくるから」と言い残して
おじいちゃんは兵隊さんになってしまった
そして終戦を迎えたある日のこと
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