そこにあるもの/プル式
はもう翼は無くそれどころか
重たい荷を背負い軽く美しかったその四肢は
年老い無様に骨ばり醜く蹴り上げる力さえない。
心は石の様に重たく飛べる事など信じる事さえ出来ない。
君よ
君は一人ではないのだ。
君よ
君はすべてを受け入れたのだ。
君よ
何故に今思いを馳せるのか。
君は既に翼を失ったのだ。
どこに行くにもその足で地を踏み締めねばならない。
何をするにもその両の手に掴み取れるものだけが
本当の事なのだと知ってしまったのだ。
しかし君よ
君には今あの頃には無かった平穏があるではないか。
君には愛しい妻と愛しい子が帰りを待っているでは無いか。
君は果てな
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