足/佐々宝砂
 
ばくばくと奇妙な声で嘆いて八つ足は怯えて。

八つ足が食い散らかした誰かの足。
腕を伸ばして拾い集めるとどこかで呼子が鳴る。
あれが合図なのだとしても、
立ち上がることはできない俺には足がない。
俺が地雷を踏んだのはもう十五年も昔のこと。

呼子がもがり笛に混じって聞こえてくるたび、
真っ青に澄み晴れた夜空、
純白の旗虫が東から西へと飛んでゆく。
旗虫には足がない。
旗虫はそれを苦にしたことがないようにみえる。
旗虫を見ると八つ足は怯える。
旗虫は空から降りてこないのにそれでも怯える。

八つ足は醜い灰色の毛に覆われている。
ところどころに黒い棘も生えている。

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