異形の詩歴書 14歳秋/佐々宝砂
んとも思わなかった。「地獄変」よりも夢野久作の「戦場」の方が恐ろしかった。「十五歳の詩集」は読み飛ばした(悪くない、いい感じだと思いはした。私は以後何度かこの「十五歳の詩集」を読み直すことになる)。14歳の私をぶっとばしたのは、「マダム・ラボの数奇な履歴書」と「なぜ東京都の電話帳はロートレアモンの詩よりも詩なのか」と「人力飛行機のための演説草案」と「事物のフォークロア」と「消されたものが存在する」だった。それらを読んだとき、私は、『家畜人ヤプー』よりも恐るべきものを読んでしまった、と感じたのだった。
いま「マダム・ラボの数奇な履歴書」を読み返すと、私は苦笑せざるを得ない。佐々宝砂というこ
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