異形の詩歴書 高校編その5/佐々宝砂
 
期末テスト前のことだったと思う。あのときのパーソナリティーは誰だったろう。私はもう思い出せない。彼はとにかく「アンチモラルの化身ドアーズのジム・モリソン」と叫んだ。私はなんとなくラジオを録音する気分になっていて、ほとんど何も考えず録音のボタンを押した。そのとき流れた曲を、私は生涯忘れない。それは"Light my fire"と"Moonlight drive"だった。声を聴くだけで恋をするなんてことがあるのだ。私はそのとき、ドアーズのボーカル、ジム・モリソンに恋をした。そして、恋をしたとたん、恋の対象がすでに死んでいることを知った。

 知りもしない人の
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