異形の詩歴書 高校編その5/佐々宝砂
人の死、それも全く自分に関係ない人の死にそれほどショックを受けたのは、あとにも先にもそのときだけのことだ。私はジム・モリソンの声に、確かに韻をよみとった。英語はちっとも得意ではなかったはずだったのに。しばらく遠ざかっていた詩というものを、私はジムの声によって思い出した。私はジムの言葉の意味の半分もわからなかったはずなのに。
私はいまもおもう。あの邂逅はなんだったのだろうかと。私は16歳だった。まだ17歳になっていなかった。私には愛するものがなかった。強いて言うならSFだけが愛の対象だった。そんな私にとっての詩の世界のカリスマは、図書館ではなく書店ではなく、流れては消えてゆく送りっ放しのラジオから立ち現れたのだった。
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