水栽培/塔野夏子
この日頃
心に映ったいくつかの言葉たちが
モビールになって
中空に
揺れる
長椅子あたりに
たたずむのは
けれどもう溶けて消えかかっている
誰かの
不在の
かたち
陽射しが
半透明にふちどる
窓のそばには
ヒアシンスと
クロッカス
その向こうには
うすあおくやわらかな 空
そっと
指をのばしてみる
ひとひら ふたひら
時折翳りも舞い込むけれど
忘却という優しさが
ふいにひどく哀しかったりするけれど
何処からか
流れてくる
ゆるやかなピアノの音色が
モビールと
戯れはじめて
指をのばしたまま
ひととき
目を閉じてみる
瞼のうらにうつるのは
花の
かたち
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