窓辺の人/塔野夏子
 
朽ち果てた約束たちが
影の中に横たわっているけれど
これまでの全ての喪失たちが
僕の背中を見つめているけれど
今はただ何もかも
そのままにして待っている
浅い春の窓に
しずかな光が満ちてくるのを

かたちのない傷たちとその痛みとが
本当になぐさめられる日は来ないとしても
祈りよりももっと純粋な何かが
胸に降り立つのを待っている

途絶えてしまった歌たちが
なかぞらに虚ろに漂っているけれど
今はただ何もかも
そのままにして

待っている
君の菫のまなざしを想いながら
浅い春の窓に
しずかな光が満ちてくるのを




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