近代詩再読 草野心平/岡部淳太郎
 
間の中で」「猛烈な天」などがあり、それらの詩も好きなのだが、草野心平の詩を時間を置いて読み返してみると、むしろ詩人の心情が飾り気なく現われている「わが抒情詩」や「デンシンバシラのうた」などにより強く惹かれる。


そんなときには。いいか。
デンシンバシラとしゃべるんだ。

稲妻が内部をかけめぐり。
丸い蜜柑がのけぞりかえる。
そんな事態になったなら。
白ちゃけて。唸るようにさびしくなったら。
人じゃない。相棒になるのは。
夜中の三時のデンシンバシラだ。

デンシンバシラはゆすっても。
デンシンバシラは動かない。
手のない。指のない。見えない腕で
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  グループ"近代詩再読"
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