近代詩再読 草野心平/岡部淳太郎
 
腕で。
デンシンバシラは。しかし。
お前を抱くだろう。

ありっこない。そんなことが。
そんなことの方がまだあるんだ。

ちぐはぐで。ガンジガラメで。
遠吠えしてもまにあわない。
そんなときには。霙にぬれて。
夜中の三時のデンシンバシラだ。

(「デンシンバシラのうた」全行)

 淋しい人を慰めるような口調でありながら、そこには詩人が長年培ってきたユーモアのセンスが息づいている。お節介に他人を元気づけようとする者が多い中で、こんな詩になら慰められても良いと思えるし、夜中の三時にデンシンバシラとしゃべっても良いかもしれないとも思えてくる。
 草
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