降霊術/岡部淳太郎
 
夜、
扉は開かれる
恐れることはない
我々は誰もがそこへ向かっている
まずは 手による想像を洗い浄め
火をもってすべてを鎮めよ
みだりに本当のことを口にしてはならない
それは君を不幸にする
そろりと
すべるように歩け
どこか遠くで悲鳴が聴こえても
あるいは鐘が鳴らされても
振り向いてはならぬ
過去を調べる わけではなく
古の物語を語る はずもなく
夜は
霊を孕む
その超波を受信するのだ
そうして ただ静かにしていて
悪でさえも優しく抱きとめて やがて
流れる静物
この先数里の 人柱

南無。



連作「夜、幽霊がすべっていった……」

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