夜の騎士/岡部淳太郎
夜は暗い
夜は寒い
いまこの荒野を
この時間にしか在ることが出来ない騎士が
ひとりゆく
彼は自らの馬を失くした
それは五百年前のこと
彼は自らの体を失くした
それは五百年前のこと
いま彼はひとり
錆びた剣を杖にして
夜を歩く
都市の中で人々の日々は
現在のように
過去のように
ただ過ぎてゆき
けして未来が訪れることはなく
空気中に蔓延する生活の箴言
だらだらと繰り返される
またもうひとつの今日
そして騎士はひとり
荒野にいて
人々の住む都市を目指す
だが都市では
騎士の存在は忘却されていた
人々はみな同じ速度で滅びつつあった
だがこの影の
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