猫たちの肖像画/まどろむ海月
ように貧しい生活をするほかありませんでした。
画家の住む貧しいアパートの向かいのアパートの3階に、画家がひ
そかに恋いこがれている少女が住んでいました。別に美しい女性とい
うわけでなく、どちらかといえば目立たない、しかも病のため戸外に
一歩もでることのできない少女でした。このほとんどひとめを引くこ
とのない彼女をかいま見ては、画家は切ない恋を感じておりましたが、
自分のあらゆる才能に絶望していた彼には、愛する人を幸福にする自
信などとうていなくて、愛すれば愛するほど「あの人をあきらめなく
ては」という不幸な決意をかためるばかりでした。
実は少女の方もこの若
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