猫たちの肖像画/まどろむ海月
 
の若い画家に恋いこがれておりました。毎日むな
しく見下ろす窓辺からふと目を見合わせたこの青年に、その日から彼
女も切ない恋を抱くようになったのです。しかし内気な彼女も気弱な
青年と同じ決意をかためていました。というのも、彼女自身不治の病
にかかっており、自分がまもなく死ななければならないのを承知して
いたからです。

 こうして二人は、かたい表情の中に切ない思いを秘めたまま、互い
の片恋を知ることはありませんでした。貧しさと失意の中でやがて画
家は死にました。一枚の美しい黒猫の絵が残されていました。青年に
とっては恋いこがれた少女の姿そのものでした。そして遺されたメ
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