猫たちの肖像画/まどろむ海月
 
は、
誰に会うことなく例の白いキャンバスに向きあったまま、むなしく日
々を過ごしておりました。ある日こんな画家の耳にも、彼の絵筆を奪
うきっかけとなった例の「世界一幸福な」王子と王女が亡くなったと
いうニュースが伝わってきました。同時に不思議な黒い猫と白い猫の
話も。そしてその話を聞いたとき、突然画家は何を描くべきかをさと
りました。長いあいだにらみ続けてきた白いキャンバスに、画家はは
げしい勢いで絵を描きはじめました。そして出来上がったのが、何と
も幸せそうな二匹の猫と何匹もの可愛らしい子猫たちの、家族の肖像
でした。


 すっかり年をとった一人の画家が、一
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