「静かの海」綺譚(11〜20)/角田寿星
 
 11

「地球は二酸化硅素の体を持った生物である
 ことが最近になって判明した」と
夢の中で見たプラカードに書いてあった

地球が寝返りをうった 地球がくしゃみをした
その際に起こりうる惨劇を考えると
ぼくは不思議に悲しくなった
杞の人の悲しみ


 12

マラケシュにいた時も
海底牧場で働いた時もこの季節になると
春の風を感じ 桜の花を思った
そして今 「静かの海」にひとり佇む時も
また

鉛筆の削りかすの
木の匂いをそっとかぐ

気候調節のスイッチを「山の三月」に合わせ
人恋しくなり 友に会いに行く
「灰色の菫」という名の小さなバーに

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