青い預言者(マリーノ超特急)/角田寿星
ーだった。横なぐりの雨に濡れてアスルは暗がりに白い歯をみせた。ここに住みたいのだ と。村人はアスルの右腕に簡易身分照会キットをあてる。出身地は南に点在する島々のひとつ。犯罪歴なし。追放歴なし。そうしてはじめて村人はアスルを屋内に招き入れかたい握手を交わした。アスルと村人は村はずれにちいさな小屋をつくりそこがアスルの住処となった。
来る日も岩だらけの痩せた土地を耕しつづけるアスルの褐色の肌は村を吹き渡る潮風の色によく馴染んだ。家々の枯草色の壁や貧弱な実りをもたらす穀物や果実の色に調和した。彼はちいさなハーモニカをひとつ持っていた。ときおりアスルは切り立った崖に囲まれた入江で誰にも解らない記号の
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