青い預言者(マリーノ超特急)/角田寿星
 
者は村のさらに奥ふかく横たわる森を突っ切って来たのだと言うが今や人を喰らい拒絶する緑の地獄をどのように抜けてきたのか説明できる者は誰ひとりいない。また或る者は南回りの海洋特急に乗って多くの者がそうするようにこの駅に降りたったのだと言うが彼がはじめてここの扉を叩いた日は嵐の晩で崖下に列車の姿は影もかたちも視えなかった。或る者は言う。嵐の晩には海洋特急は装甲をみずから被りひとときの眠りに就くのだ と。

あの日アスルは濡れそぼったまま黙って右前腕を差し出した。わたしたちの右腕には身分証明を明かすコードが組み込まれており見ず知らずの旅人が行き交う海沿いの村々ではじめて扉を叩く時のそれが正しいマナーだ
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