箱入り娘に関する詩的考察/岡部淳太郎
 
箱入り娘に関する一連の推論は、世界という
もうひと回り大きな箱に対する裏切りのひと
つであり、それを論じる者たちは、それを奪
おうとする者たちと同じく、等しく同じ罰を
受けなければならない。箱入り娘とは、ごく
単純化して言えば、文字通り箱に入ったひと
りの娘であり、あるいは、それはひとつの比
喩でしかなく、家庭に閉じこめられ、親の庇
護と保護の下に厳しく育てられ躾けられた、
淋しい娘のことである。そう考えると、彼女
に対して世の男たちが憧憬とともに躊躇を感
じてしまうのも、いわれのないことではない
だろう。箱入り娘を送り、また迎えるのは、
彼女の親以外にはありえず、父親以
[次のページ]
   グループ"散文詩"
   Point(6)