或る夏の日/虹村 凌
も、諦めなかった。意地だったのかも知れない。
俺は、とにかくトラックに聞いて回った。
広島とか、大阪とか、とにかく西に向かうトラックに聞いた。
ナンバープレートを見ては、運転手に声をかけた。
全部駄目だった。
交差点で、中州に立ちつくした。
赤信号になる度に、止まっている車に聞いた。
「すみません、岐阜まで。」
「いや、そっちまで行かないから。」
「途中まででも…」
「俺は逆方向に行くんだ。」
パワーウィンドウは閉められた。
何台も、何台も、俺は聞いて回った。
ワパーウィンドウを開けてもらえない事もあった。
何度窓を叩いても、シカトされた事もあった。
何故
[次のページ]
前 次 グループ"自由人の狂想曲"
編 削 Point(5)