或る夏の日/虹村 凌
 
。俺自身、理由がわからない。
「嘘だろ?」
一瞬で見抜かれた。
「いいえ、本当です。だからお願いです。」
俺は懇願した。
「…残念だな、横浜までなら行くんだけど。」
お兄さんは、言った。
「そうですか…」
俺は目を伏せた。駄目だと思った。
「がんばってね」
顔の見えないお姉さんが言った。
ちょっと、がんばろうと思った。
バンは走り去った。俺は取り残された。

俺は、諦めなかった。諦めない。
俺が本当に惚れてたのはAだ。Yじゃない。
でも、何故か諦められなかった。
雨に濡れて、排気ガスにまみれて。
煙草も無い。缶コーヒーなんて、とっくの昔に冷えちまった。
でも、
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