愁思と不在/道草次郎
 
けれども
私には私がいません
不透明な秋のなかで
落とし物のように透過されたから

風は銀河を
みだりにはせず
根の調べに
いそいそと弾むばかりで

川魚のことや
難読地名すら愛し
秋それは
はや足でかけてゆきます

蛍光菌(きのこ)により
与えられた一夜(ひとよ)に
心音のはかなさは響(な)り
耳朶は
玲ろうの宝石になります

杳(よう)として音信
不在伝票の宙がえり

枯葉色した私の夢は
風のゆくえを
花イチジクに
たずねることでしょう

   グループ"幻想の詩群"
   Point(9)