夢(ニ) 部分/沼谷香澄
 
い。かもしれないなどととんでもない、父も、(母と同じように!)、したいこと、したかったことを常に口惜しそうに語っていたではないか!(よく聞けばいつも子ども心にさえ目先の情報に踊らされていると思わざるを得ないものでしかなかったが)。
戦争中の子どもの夢は「生き延びること」。その夢を父は大きく果たしたのだ。(他の夢を抱き得なかった哀れな者たちよ!)蔵書?土蔵?とんでもない。そんなものの持てる暮らしなら昭和の時代に口減らしのために奉公に出されることもなかったであろうに。柘榴 桑 アケビ 木苺 蛇 蛍 鼠 足高蜘蛛 鉦叩
お父さんおめでとう夢はかなってい
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