アップルパイの2乗/るるりら
 

お客さまの言う「嘘のない笑顔」だというあの言葉が
受け入れ難かった
大切な人を失っておいて
ほんとうの笑顔をする自分がいるとしたら
それはそれで苦しかった
できることなら ずっと泣いていたかった
しきりに沸き起こる自己憐憫も
林檎とシナモンを重ねる時間の中に封じ込めると
高温の窯が 焼いてくれた
ほどなく いつものように高熱用ミトンも焦げるほど熱いパイの放つ いい匂い




π(パイ)×π(パイ)



あれからずいぶん時間が経ちました
あの仕事を辞めた直後に 顔面神経痛で顔が歪んだこともありますが
それも昔のことです
また新しい年がめぐろうとして
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