アップルパイの2乗/るるりら
 
しています
いまでは二畳ほどもある焼き釜の あの店も ありません
なにもかも消えてなくしてしまう仕事は窯ではなく時間の仕事です

ほんとうに悲しむべきことは なになのか
ほんとうに嬉しかったことは なぜだったのか
ほんとうに大切にしたいことは なになのか
ほんとうに掬ってくれたのは 林檎の匂いだけだったのか
いまなら すこし冷静です

十二月の林檎をテーブルに 今日も ひとつ置いています
人と林檎の話を しました
ふと きがつくと
わたしは そういえば林檎にも季節があることすらしらないで居た気がします


今日の私に
いままで思いが至らなかった遠い日の林檎の花が 一個の果実となって
わたしと向き合ってくれています
なにかに自分を加工するためではない ほんとう果実が
今日の私に ほほえみかけてくれています




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この詩は、メビウスリング勉強会参加作品です。

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