猫砂/……とある蛙
何一つなく
それでも
それでも
行かなければならない場所で
ひとしきりの身震い、トイレを済ませ
軋む身体を支えながら
麻痺した右足を一段下ろし
手摺りに沿って左足を一段下ろす
一つ
二つ三つ
四つ五つ六つ
ななぁ〜つ
最後の一段を降りた後
君は怖いという
とても怖いという
励ます言葉もなく
また、薄暗いべっどのある部屋に入ってゆく
トイレにゆくたび
君の心は削られてゆく
今日は何曜日だっけ
病院へは明日行くの?
いや、金曜日だよ
明日何曜日だっけ
一日中何度も繰り返すやりとり
最後に一言
行きたくないよ病院なんて
また、ゆきたくない君を病院に連れて行く。
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