狐夫婦/……とある蛙
薄の穂に水を付けて川から水を運んだり
野ネズミを捕って食いちぎったの肉片を
雌狐の口元に置いたり
雌狐はじっと雄狐を見るだけで
何も口にしなかった。
雄狐の鳴き声に最初は返答していたが、
そのうち唸りもしなくなった。
雄狐はそれでも雌狐の体をなめる
毛繕いするように丁寧に舐める。
それでも雌狐はじっと雄狐を見ていた。
雄狐は突然薬草のことを思い出す。
薬草のある崖の上に勇躍出かける
きっと元通りになると信じて
薬草を持って帰ったが雌狐は食べない
雌狐を巣穴の中に残して雄狐は獲物を追いかけた
日が暮れていても獲物を執拗に追いかけた。
まるで、その獲物
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