狐夫婦/……とある蛙
獲物が雌狐にとり憑いた敵のように
雌狐は咳き込む。
もう息は切れ切れになり、
衰弱しているのが
呼吸からも見て取れる。
それでも雄狐は獲物を運ぶことをやめない
それ以外にしてやれることがないのだ
してやれることを続けるしかないのだ
雌狐は目を閉じた。
それから二度と目を開けなかった。
雄狐はそれでも獲物を運び続ける
自分が食べることもなく。
雄狐はそれからも獲物を運び続けた
ずっと運び続けるのだった。
そして雌狐が動かないことを確認したとき
雄狐は冬に向かって歩き出した。
なんの防備もなく、行き先もなく
雄狐は冬に向かって歩いて行った。
たった一匹で。
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