『聖母ジェンマ』 卵から始まるはな詩?/ただのみきや
て
ジェンマの逆鱗に触れることとなる
雛を横取りして昼飯にしようとしたからだ
もともと喧嘩の弱いジェンマが子を守る母狐に豹変し
相手の首に噛みついてこっぴどく痛めつけたものだから
皆は顔色を変えた
遠巻きになった狐たちに
「おれの計画を邪魔するやつは容赦しないからな! 」
ジェンマはそう吠え立てると他の狐から離れ
上流のほうへ歩いて行った そして山の奥深く
泉の傍の洞窟で暮らし始めた
月日は流れ
雛は立派な雌のカモに成長した
山の木々の紅葉も深まり
ついに別れの季節がやってきた
かと 思われた
ところがある日 雌の匂いを嗅ぎつけて
雄のカモがやって来
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