詩集『十夜録』全篇/春日線香
握り締めた腕が
頭髪のような葉を繁らせた森にいて
冬のあいだに見えなくなったものたちを
早速 埋めにかかろうとしている
熟れすぎた林檎の目玉は落ちて
あちこちの穴の中から
羽を生やした何かが顔を覗かせる
そんな音が聞こえてきたとして
サルデニア
道案内に描かれた帆船も
真空に耐えられない様子
欠ける途中で気づいてしまった月は
ほっそりと爪先を燃やしながら
この暗い森の水面で
透明な血を吐いているかもしれないのに
青い火
土のやわらかい感触がすぐしたにあるのはとてもここちよいものだ
とは思うけどそこにいてはいけないよと呼ばれてふ
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