詩集『十夜録』全篇/春日線香
 
てふりかえるとタオ
ルをあたまにかぶった老人のすがたをした案山子(かかし)がぎゃらりぎゃら
りと笑っているさまはもうまるで地獄に来てしまったのかと思われ
る光景でとてもおそろしいゆめだった。すぐさま角笛を取り出して
星よ走れとばかりにふきならしてやったその瞬間にだけ雨はやんで
これはきっと愛のようなものであるなと思いながら井戸をのぞけば
むこうがわからものぞきかえされてあなたは誰と尋ねられた。いや
ぼくはぼくさここにむかしからすんでいる魔物のようなものだ、奇
遇ねあたしもそうよどうしていままであたしたちであわなかったん
でしょ、そうだねきっと山崩れの神様のせいさ。ぼくはうれしくな
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