詩集『十夜録』全篇/春日線香
 

ふらふら歩きの道行きを
焼かれながら見つめる
進む道はもう
ないというのに





 供養

怖い夢から目を覚まして
私たちは古い座敷に
手紙を持ち寄っていった
食事の支度をしたり
庭の草むしりをしたり
そうやって日々を過ごすことが
供養になればいいと
言葉少なに話した
遠くで木立が揺れて
冬の南天が色づいている
誰が忘れたわけでもない
手紙で折った飛行機が
青空を滑っていく





 サルデニア・トランスファー

神様の首が転がってくる
まだ青い頬を揺らしている
そのために草叢は割れるほど凪いでいる

シャベルの柄を握り
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