詩集『十夜録』全篇/春日線香
あとで
女中が手をつけるのだろう
などと静観している
ところが顔役によると
あなたが食べないので
料理人が責任を取って
すべて食べるのだ
というので
一体どれだけの料理が
成功と挫折を
行き来するのだろうかと
奥の台所を
気にしてばかりいる
廊下
奥に進めばいいと
席を立ったのはいいが
どこまで行けばいいのか
聞くのを忘れた
暗い明かりの下
行き交う人は
あなたの目的は全部
端から端まで知っているんだ
とでもいうように
意味ありげに微笑む
磨かれた廊下は
長すぎる気がするが
どこまでも続く壁が
さめざめと白くて
自分
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