草原の記/平瀬たかのり
い声が
いよいよ四肢を漲らせる
二頭は轡を並べたまま
駆ける駆ける駆ける
若者が手綱を操ると
鹿毛はぐいぐい躰を寄せる
あえぐ栗毛
若者が手綱を操ると
栗毛はすっとま後ろに取りつく
いやがる鹿毛
抜きたい抜かさない抜けない
離したい離さない離せない
逃げる兎、飛び立つ小鳥たち
狼すらも恐れをなす
草原を切り裂いていく疾風
いのちの塊
ホウッ!
ホホウッ!
日が暮れて
放していたいた羊をすべて寝床に帰したら
娘の仕事も終わる
急に鳴きだす相棒の犬
どうしたのおまえ
夕焼けに
耳をすませば蹄の音
目
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