草原の記/平瀬たかのり
 
なかった
 はじめて黙ったまま別れた
 
 三日目の朝
 鹿毛の若者が栗毛の若者を呼び出した
 なあ、どっちが勝つかで決めようじゃないか
 血走った目
 受けた、恨みっこなしだ
 痩けた頬

 その夜も満天の星
 宇宙の片隅に厩がふたつ
 勝たなきゃならない
 あいつはともだちだけど
 負かさなきゃいけないんだ
 決めたんだ
 分かるよなおまえなら
 若者は
 首筋をなで
 流星をなで
 先に娘のところへたどり着くのは
 俺とおまえだ
 鹿毛は一声いなないた
 僕とおまえだ
 栗毛はじっと見つめ返した

 ホウッ!
 ホウッ!
 爆ぜる追い声
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